Reading the Label
紅茶ラベルの読み方
DARJEELING 2nd FLUSH FTGFOP1 Castleton——お店で袋を裏返すと、こういう呪文が並んでいます。 全部に意味があり、読めれば買う前に味の見当がつきます。6種類のラベルを1行ずつ分解しました。
先に断っておくこと
等級記号も産地の書き方も、世界共通の法定規格ではありません。産地や作り手ごとの慣習で、同じ記号が別のものを指すこともあります。ここで扱うのは「その形式でよくある書き方」で、実在の商品パッケージの引き写しではありません。
インドの茶園もの(ダージリン)
いちばん情報量が多いタイプ。産地・摘み時期・等級・茶園名・ロット番号・年が全部入っています。
分解する
- 1
- 2
- 3
FTGFOP1等級
茶葉の大きさと見た目を表す記号で、味の順位ではありません。F=Finest、T=Tippy、G=Golden、F=Flowery、OP=Orange Pekoe。末尾の 1 は同じ等級名のなかでより上位、という意味で付けられることが多いのですが、統一規格ではなく茶園や取引者によって用法が違います。
- 4
- 5
DJ-247ロット番号
DJ はダージリン茶の製造インボイスに付く接頭辞で、続く数字はその茶園の製造ロットを識別する通し番号です。付番のしかたは茶園によって違います。同じ茶園・同じ時期でも、ロットが違えば別物になります。
- 6
つまり「キャッスルトン茶園の2024年、夏摘み、ティップの多いフルリーフ、ロット247」と読めます。マスカテルを探しているなら、産地と摘み時期のこの組み合わせが手がかりになります。
セイロン(標高区分つき)
スリランカの茶は、産地名のほかに「どのくらいの標高で育ったか」が書かれます。味の見当がつく手がかりです。
分解する
- 1
PURE CEYLON TEA産地の保証表記
中身がスリランカ産の茶葉だけであることを示す表記です。よく似た位置に付くライオンのマークはこれとは別で、スリランカ紅茶局の登録商標。100%スリランカ産で、かつ現地で包装し、局の承認を受けたものにだけ使えます。
- 2
- 3
HIGH GROWN標高区分
おおむね1,200mより上で育った茶葉のこと。下にミディアム、ローと続きます。高いほど香りが立ち、渋みは繊細になる傾向がありますが、境界の数字は産地区分によって多少違いますし、味は品種や季節、作り方でも変わります。
- 4
つまり「スリランカ産100%、ウヴァの高地、砕いた茶葉」。蒸らしは短め(45〜180秒)から試すのが安全です。
アッサム CTC
同じ「BP」でも、CTC と書いてあるかどうかで別物です。等級の記号は製法とセットで読みます。
分解する
- 1
- 2
- 3
BP等級
Broken Pekoe。CTC には BP・PF(Pekoe Fannings)・PD(Pekoe Dust)・Dust といった粒度別の等級があり、オーソドックスとは別に運用されています。BP のように両方に現れる略号もあるので、製法とセットで読んでください。
- 4
つまり「アッサムの夏摘みを CTC で作った、やや粗めの粒」。濃く出るので、茶葉は控えめに。チャイに向きます。
着香茶(フレーバードティー)
「紅茶」と「着香した紅茶」は別の商品です。どこに何が書いてあるかで見分けられます。
分解する
- 1
EARL GREY商品名
産地名ではありません。ベルガモットで香りをつけた紅茶を指す一般的なタイプ名で、特定の産地や1社の商品を示すものではありません。だから店ごとに味がまったく違います。
- 2
FLAVOURED BLACK TEA分類
香りを後から付けた紅茶であることを示します。茶葉そのものの香りではありません。日本語では「着香茶」「フレーバードティー」と書かれます。
- 3
with bergamot flavouring香料の表示
何で香りを付けたか。ベルガモットは柑橘の一種で、伝統的には果汁ではなく果皮から採る精油が使われます。市販品には天然香料のもの、合成香料のもの、両方を使ったものがあり、どれなのかはここだけでは分からないことが多いです。
つまり「ベルガモットで香りを付けた紅茶」。ベースの茶葉が何かは書かれていないことが多く、そこは店の裁量です。産地名が併記されていれば手がかりになります。
和紅茶
日本の紅茶は語彙が別です。等級記号はふつう使わず、品種と摘み番で書かれます。
分解する
- 1
- 2
- 3
べにふうき品種
紅茶向けに育成された日本の品種。母方の「べにほまれ」は、明治期にインドから持ち帰られた系統に連なります。緑茶用の「やぶきた」で作った紅茶とは味の出方が違います。
- 4
一番茶摘み番
その年に最初に摘んだ茶葉のこと。日本茶と同じ数え方で、海外の「ファーストフラッシュ」におおむね対応します。作り手によっては、渋みや力強さを生かすために二番茶以降を紅茶に回すこともあります。どの茶期が向くかは品種と、目指す味しだいです。
つまり「静岡の、べにふうきで作った、その年の一番茶の紅茶」。等級記号がふつう出てこないのは手抜きではなく、そもそも別の体系だからです。
スーパーのティーバッグの箱の裏
いちばん身近で、いちばん誤読されやすいところ。「原産国名」は、その紅茶を売っている会社の国ではありません。
分解する
- 1
名称:紅茶名称
中身が何かの表示です。ここが「紅茶飲料」や「茶系飲料」なら別物、「ハーブティー」なら茶の葉は入っていません。
- 2
原材料名:紅茶原材料名
使っている原材料。ブレンドなら「紅茶(インド、スリランカ、ケニア)」のように産地の国名が並び、使用量の多い順に書くのが原則です。安定した味を毎年出すために配合を変えるので、順番が入れ替わることもあります。香料を使っていればここに書かれます。
- 3
原産国名:スリランカ原産国名
「どこの国のブランドか」ではありません。商品の内容に実質的な変更をもたらす加工をした国が書かれます。茶の場合それに当たるのは荒茶の製造——摘んだ葉を揉んで乾かす一次加工です。ラベルを貼る・袋に詰める・ブレンドするといった作業は実質的な変更に当たらないので、イギリスの会社が詰めても原産国はイギリスにはなりません。輸入された加工食品に付く項目です。
- 4
内容量:40g(2g×20袋)内容量
ティーバッグ1袋あたりの茶葉の量が分かります。2gは1杯分の目安。リーフの茶葉と値段を比べるときは、この1袋あたりの量で割り戻すと同じ土俵に乗ります。
つまり「スリランカで荒茶まで作られた紅茶を、2gずつ20袋に詰めたもの」。原産国名を「その会社の国」と読むのが、いちばんよくある勘違いです。
あわせて読みたい
6種類のラベルを分解しています。