Tea Customs
世界の紅茶の飲まれ方
二段重ねのポットで濃さを調節するトルコ。湯沸かしの上に濃い茶液を載せておくロシア。 布の袋で何度もこす香港。バターと塩を入れて攪拌するチベット。 同じ茶葉から、これだけ違う飲みものが生まれます。
この記事について
同じ茶葉でも、国が変われば道具も作法もまるで違います。ここでは道具と手順が具体的に書けるものだけを集めました。茶葉(チャノキ)を使わないマテ茶などは扱っていません。
トルコ
チャイ(çay)二段重ねのポットで濃い茶液を作り、湯で好みの濃さに割る。砂糖入りのストレート。
トルコ語の çay は茶そのものを指す言葉で、インド式のミルクチャイとは別物です。ミルクは入れず、角砂糖を添えて飲みます。
使うのはチャイダンルック(çaydanlık)という二段重ねのポット。下段で湯を沸かし、その湯を茶葉の入った上段(demlik)に注いで、弱火で保温しながら濃い茶液(dem)を作ります。飲むときは上段の濃い液をグラスに注ぎ、下段の湯で好みの濃さに割ります。
器は縁が反ったチューリップ型の小さなグラスが一般的で、取っ手が無いのでふちを持ちます。よく出た深い赤色の茶を「タヴシャン・カヌ(兎の血)」と褒めることがあります。濃さの段階を表す正式な呼び名ではなく、口語的な言い回しです。
道具・作法チャイダンルック(二段ポット)/チューリップ型グラス
ロシア
サモワールとザヴァルカ湯沸かしの上に濃い茶液のポットを載せ、注ぐたびに湯で割る。ジャムを添えることも。
サモワールは炭や電気で湯を沸かす金属の湯沸かし器です。その上に、濃く淹れた茶液(ザヴァルカ)を入れたポットを載せて保温します。飲むときはザヴァルカを少量注ぎ、サモワールの湯で割ります。濃さを一杯ごとに決められるのが利点です。ザヴァルカは茶液そのものを指す語で、ポットの名前ではありません。
甘みは砂糖のほか、ジャムを添えることがあります。ジャムを紅茶に溶かさず、匙で口に含んでから茶を飲む——という飲み方も知られていますが、誰もがそうするわけではなく、地域や家庭によります。
中国から陸路のキャラバンで茶を運んでいた歴史があり、その道のりにちなむブレンドが「ロシアンキャラバン」の名で親しまれています。道中の焚き火で香りが移ったという由来話も語られますが、確かめられた話ではありません。
道具・作法サモワール(湯沸かし)/濃い茶液(ザヴァルカ)のポット
インド
マサラチャイ/カッティングチャイ細かい茶葉を牛乳と水で煮出す。スパイスを加えたものがマサラチャイ。街では少量ずつ売られる。
インドのチャイは、細かい茶葉を牛乳と水で煮出して作ります。しょうがやカルダモンなどのスパイスを加えたものがマサラチャイで、スパイスを入れないチャイも普通に飲まれます。煮出すぶん、渋みとコクが強く出る茶葉ほど向きます。
街角ではチャイワラと呼ばれる売り手が小さなグラスで供します。ムンバイなどでは少量で頼む「カッティングチャイ」がよく知られていて、グラス半分ほどの量を何度も飲むスタイルです。
作り方はレシピページにまとめています。
道具・作法深鍋で煮出し、茶こしでこす
イギリス
クリームティースコーンにジャムとクロテッドクリーム。デヴォンとコーンウォールで塗る順番が違う。
クリームティーは、紅茶にスコーン・ジャム・クロテッドクリームを添えた軽い組み合わせです。イングランド南西部の名物として知られています。
有名なのが塗る順番の違い。デヴォン式はクリームを先に塗ってジャムをのせ、コーンウォール式はジャムが先でクリームが後です。どちらが正しいかは長く言い合いになっていますが、味の優劣というより地域の流儀の話です。
1日のなかの紅茶の時間(アーリー・ティーからナイト・ティーまで)や、アフタヌーンティーの成り立ちは文化の記事にまとめています。
道具・作法スコーン・ジャム・クロテッドクリーム
香港
港式奶茶(絲襪奶茶)布の袋で何度もこし、エバミルクを合わせる。濃くなめらかなミルクティー。
港式奶茶は、数種の茶葉をブレンドして濃く煮出し、布の袋で何度もこして作ります。この袋が使ううちに茶色く染まり、絹のストッキングのように見えることから「絲襪奶茶」とも呼ばれます。
仕上げに使うのは生乳ではなくエバミルク(無糖練乳)。濃くなめらかな口当たりが特徴で、茶餐廳(チャーチャンテン)の定番です。
「港式奶茶製作技藝」は2017年、香港政府が初めて公表した「香港無形文化遺産代表作名録」に記載されました。ユネスコの登録とは別の、香港政府による名録です。
道具・作法布のこし袋/エバミルク
台湾
珍珠奶茶(タピオカミルクティー)ゆでたタピオカを沈め、太いストローで飲む。1980年代の台湾で生まれたとされる。
珍珠奶茶は、ミルクティーにゆでたタピオカを沈めた飲みものです。1980年代の台湾で生まれたとされ、いまでは世界中に広まりました。ただし発祥の店については台中の春水堂、台南の翰林茶館など複数の説があり、定まっていません。
太いストローで、飲みながら粒を一緒に吸い上げるのが特徴。粒の食感が主役になるため、茶は濃いめに淹れて負けないようにします。
台湾は紅茶そのものの産地でもあり、日月潭紅茶(紅玉)や蜜香紅茶が知られています。
道具・作法太いストロー/ゆでたタピオカ
チベット・ヒマラヤ
バター茶(ポーチャ)固めた茶を煮出し、バターと塩を加えて攪拌する。甘くない、汁物に近いお茶。
バター茶は、固めた茶(磚茶)を長く煮出した液に、バターと塩を加えて筒状の道具で攪拌して作ります。乳化して、とろりとした口当たりになります。
伝統的には砂糖を入れず塩で調えるため、甘い飲みものというより汁物に近い口当たりです。高地の寒冷な土地で、日常的に飲み継がれてきました。
同じ「茶」でも、甘い飲みものとしての紅茶とはずいぶん役割が違います。
道具・作法ドンモ(攪拌用の筒)/磚茶・バター・塩
モロッコ
アッツァイ(ミントティー)緑茶にスペアミントと砂糖。高い位置から注いで泡を立てる。紅茶ではなく緑茶がベース。
モロッコのミントティーは緑茶がベースです。紅茶ではありませんが、茶の飲まれ方として外せないので入れました。ガンパウダーと呼ばれる粒状の緑茶に、スペアミントと多めの砂糖を合わせます。
特徴は注ぎ方。ポットを高く掲げてグラスへ細く落とし、表面に泡を立てます。泡が立った状態で供するのが良いとされます。
客をもてなす場に欠かせない飲みものです。
道具・作法細口のポット/小さなグラス。高い位置から注ぐ
アメリカ南部
スイートティー熱いうちに砂糖を溶かし、氷で冷やす。よく冷えた甘いアイスティー。
アメリカ南部を代表する飲み方が、この冷たく甘いアイスティーです。砂糖は冷えてからでは溶けにくいため、熱いうちに加えて溶かしてしまうのがコツ。
レモンを添え、氷をたっぷり入れたグラスで供します。食事に合わせて日常的に飲まれます。
透き通ったアイスティーに仕上げるコツ(クリームダウンの防ぎ方)は解説記事にまとめています。
道具・作法熱いうちに加糖/たっぷりの氷
日本
喫茶店のレモンティーと、和紅茶レモンを浮かべた紅茶が喫茶店に定着。近年は国産の和紅茶が各地で作られている。
日本では喫茶店文化のなかで、レモンを浮かべた紅茶が広く親しまれてきました。
レモンは香りが移ったら取り出すのがコツ。皮ごと長く漬けておくと苦みが出やすくなります。
一方で近年は、国産の紅茶=和紅茶が各地で作られるようになりました。渋みが穏やかなものが多く、和菓子にも合わせやすいと言われます。
道具・作法薄切りレモンは香りが移ったら引き上げる
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