紅茶の歴史は、中国で生まれた茶がヨーロッパへ渡り、やがてインドやセイロンで大規模に作られ、いまは産地名の保護や和紅茶といった新しい動きに続いている——という流れで読むとわかりやすくなります。気になった産地は紅茶図鑑で、その場所は世界の紅茶マップで確かめられます。
この年表のうち6つは、背景まで知るとぐっとおもしろくなります。紅茶を動かした事件で読めます。
古い時代のできごとには、後世の記録や言い伝えにもとづくものが含まれます。年代がはっきりしないものはその旨を添えました。
中国から日本へ
- 350年頃中国の字書『広雅』に、茶葉を固めて餅状にし、煮て飲む方法が記される
- 729年聖武天皇が僧に茶を振る舞ったという「引茶」の伝承(後世の記録によるもので、確かな裏づけはない)
- 760年頃陸羽が『茶経』を著す。現存する世界最古の茶の専門書
- 805年最澄が唐から茶の種子を持ち帰ったと伝えられる
- 1191年栄西が宋から帰国し、持ち帰った種子を背振山などに蒔いたとされる
- 1211年栄西が『喫茶養生記』を著し、茶の効能を説く
- 1587年豊臣秀吉が北野大茶湯を開催
ヨーロッパへ渡る
- 1610年オランダ東インド会社が日本・中国の茶をヨーロッパへ運ぶ
- 1657年ロンドンのコーヒーハウスで茶が売り出される
- 1662年ポルトガル王女キャサリン・オブ・ブラガンザが英王室へ嫁ぎ、宮廷に喫茶の習慣が広まる
- 1689年イギリスが中国・広東からの茶の直輸入を開始
- 1706年トーマス・トワイニングがロンドンでコーヒーハウスを開く。現存する紅茶商トワイニングの始まり
- 1717年トワイニングが茶葉を量り売りする店「ゴールデン・ライオン」を開店。女性も買い物ができた
- 1721年東インド会社がイギリスへの茶の輸入をほぼ独占
- 1773年ボストン茶会事件が起こる
- 1784年減税法により茶の税率が119%から12.5%へ引き下げられ、密輸が終息に向かう
産地がインド・セイロンへ広がる
- 1823年ロバート・ブルースがアッサムで自生の茶樹を知る(茶の利用自体は現地で古くから行われていた)
- 1833年東インド会社の対中国貿易独占が廃止され、茶の取引が自由化される
- 1839年ロンドンでアッサム産紅茶が初めて競売にかけられる。同年、セイロンの植物園に茶樹が持ち込まれる
- 1839〜42年アヘン戦争。茶の代金として流出した銀を埋めるアヘン貿易が背景のひとつにあった。南京条約で香港島が割譲され、5港が開かれる
- 1840年頃ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアがアフタヌーンティーを始めたとされる
- 1848〜51年ロバート・フォーチュンが中国から茶樹と製茶技術をインドへ持ち出す
- 1866年ティークリッパー競争。新茶を最初にロンドンへ届けようと、アリエル・テーピン・セリカが福州を同じ潮で発ち、99日後にわずかな差で入港した
- 1867年ジェームス・テイラーがセイロンのルーラコンデラで茶の栽培を始める。セイロン紅茶の出発点
- 1869年セイロンでコーヒーさび病が広がり、コーヒーから茶への転換が進む
- 1890年トーマス・リプトンがセイロンに茶園を購入し、自社で茶を生産
日本に紅茶が根づく
- 1875年熊本・山鹿などに紅茶伝習所が置かれ、輸出用の国産紅茶づくりが始まる
- 1876年多田元吉がインド・セイロンへ渡り、製茶技術を持ち帰る
- 1887年日本が初めて紅茶を輸入する。イギリスからわずか約100kgだった
- 1903年ティーバッグの原型が米国で特許を取得(出願は1901年)
- 1904年セントルイス万博でアイスティーが広く知られる。アメリカ南部では以前から飲まれていた
- 1906年明治屋がリプトン紅茶を初めて輸入
- 1908年茶葉を絹袋で送ったトーマス・サリバンの逸話が、ティーバッグ普及のきっかけとして知られる
- 1927年三井紅茶(現・日東紅茶)が発売される
- 1930年代短時間で濃く出るCTC製法が考案される
現代 — 世界と日本の今
- 1971年紅茶の輸入自由化。世界各国の紅茶が日本で手に入るようになる
- 1986年キリン「午後の紅茶」が発売。日本初のペットボトル入り紅茶で、冷めると濁るクリームダウンを製法上の工夫で抑えた
- 1990年代一度は途絶えた国産紅茶づくりが、各地の生産者の手で少しずつ復活する
- 1993年日本初の紅茶用品種「べにふうき」が命名登録される。母方の「べにほまれ」は多田元吉がインドから持ち帰った系統に連なる
- 2004年ダージリンがインドで初めて地理的表示(GI)に登録され、産地名が法的に保護される
- 2005年中国・福建省で金駿眉が生まれる。芽だけを使う新しい高級紅茶として広まる
- 2011年ダージリンがEUの保護地理的表示(PGI)に登録される
- 2010年代「和紅茶」の呼び名が定着し、産地とつくり手が全国に広がる
- 2019年タピオカミルクティーが日本で大流行し、若い世代に紅茶が身近になる
- 2021〜22年スリランカの化学肥料輸入禁止と経済危機により、セイロン紅茶の生産が大きく落ち込む
- 2023年アッサムで自生の茶樹が知られてから200年。産地では記念行事が行われた